今日の話題は少々マニアックになりますが、自分にとってはとても重要なことなので、どうしても今日取り上げたいと思いました。
音楽評論家・文筆家として、私ぐらいの世代の洋楽ファンには大変有名だった松村雄策氏が3月12日に亡くなったのです。
享年70歳はさすがにちょっと早すぎませんか、松村さん!と文句を言いたいのですが、2016年に脳梗塞で倒れた後ずっと闘病生活を送られていたことを知っていたので、もしかしたらようやく穏やかな眠りに就かれた、と言えるのかもしれません。
松村氏は音楽以外にも、「酒」「映画」「プロレス」など、好きなものについての優れたエッセイをたくさん残されました。
が、ここでは松村氏の人生を形作ったとも言える「ビートルズ」と彼の関わりについて、ちょっと見ていきたいと思います。
私の手元には松村氏の著作「ビートルズは眠らない」(小学館文庫)という本があります。
ビートルズの熱狂的なファンとしても知られる松村氏が2003年に発表した本作は(文庫版は2017年刊行)、ポール・マッカートニーが初来日した1991年から、ビートルズの「レット・イット・ビー・・・ネイキッド」というアルバムが発売された2003年まで、ビートルズに関する話題のみで構成され、「ロッキング・オン」に掲載された記事を一気に読むことができます。
十代の頃から、やはりビートルズを追っかけていた私にとって、松村氏は神様的存在でした。
「ロッキング・オン」の編集者として、たくさんのミュージシャンの取材をし、時に辛辣に、時に愛情がたっぷり込められたその語り口は、「松村節」と言っても良さそうな独特のもの。
そんな松村氏がビートルズとそのメンバーたちのことを語る時、それはまるで少年時代に初めてビートルズと出会い、夢中になり、貪るように彼らの作品を聴いた、その頃と感動がそのまま蘇ってくるようなキラキラ具合で、「この人どんだけビートルズが好きなんだろう」と、ファンの私でさえ思ってしまうほどです。
「ロッキング・オン」の編集長で、松村氏とは長年の盟友でもあった渋谷陽一氏は、松村氏の訃報に際し、次のようなコメントを出されました。
「松村の部屋はビートルズのポスターがたくさん貼ってあった。
『まるで学生の部屋みたいでしょう』と家族が言っていたが、本当に学生の部屋みたいだった。
部屋だけみたら、そこに70歳の老人が住んでいるとは誰も想像できないだろう。松村の精神世界そのままの部屋だった。
ロッキング・オンの50年は、僕たちの長い青春の50年でもある。松村は青春のまま人生を全うした。
ロッキング・オンを50年続けられたのは松村がいたからだ。本当にありがとう。安らかに眠ってくれ。」
松村さん、天国のジョン(レノン)やジョージ(ハリソン)と再会したら、ぜひ彼らの演奏を聴かせてもらってくださいね。