「ケリーバッグ」と並び、「バーキン」といえば、エルメスを代表するバッグとして、世界的に有名です。
ケリーバッグは、ハリウッドの女優からモナコ王妃となったグレース・ケリーが、そのバッグで妊娠中のふっくらしたお腹を隠すのにちょうど良いサイズだった、という逸話が残っていますが、バーキンにもその誕生にはイギリス生まれの女優・ジェーン・バーキンが関わっていました。
1980年代、当時彼女が愛用していたのは藤製のバスケット籠で、いつもその中にたくさんの荷物を無造作に放り込んで移動していたそうです。
そんなある日、飛行機内で偶然彼女と隣り合わせたのがエルメスの当時の社長、ジャン=ルイ・デュマ=エルメス氏でした。
彼女のバスケット籠がものでパンパンに膨れ上がっている様子を見たジャン=ルイ・デュマ氏は、「物を整理しなくても綺麗に詰め込めるバッグを作りましょう」と、ジェーン・バーキンに約束したそう。
そうして出来上がったのが「バーキン」でした。
優美で上品な見た目と、収納力を同時に実現させたこのバッグは、以来世界中の女性たちの憧れの的となりました。
現在バーキンの入手には約2年待たなければならない、とも言われており、発売当初からほとんどデザインの変更もないなどの理由から、バーキンは希少性が高い特別なバッグなのです。
こんなまるで作り話のような「実話」から、自分の名前のついたバッグを世に生み出すきっかけとなったジェーン・バーキンが7月16日に76歳で亡くなりました。
フランスの「伊達男」として知られたセルジュ・ゲンズブールが長くパートナーで、活躍の場が主にフランスであったことで、ついうっかり彼女をフランス人だと思うぐらいですが、彼女は生粋のイギリス人で、フランスに渡るときは一言のフランス語も話せなかったといいます。
それが今や「フレンチシック」のアイコンとまで言われ、フランス的なおしゃれ・エスプリを体現した女性として多くの女性たちから支持されるようになった・・・・
フランスのメディアはそんな彼女のことを「フランス人が一番好きな英国女性」と評しました。
おりしも、ジェーンの次女で、女優としても有名なシャルロット・ゲンズブールが監督・脚本を務めたドキュメンタリー映画「ジェーンとシャルロット」が、8月4日に日本で公開される予定となっています。
たくさんの伝説を残して、また一人「ミューズ」が空へ旅立ちました。