「みっともなくてもいいから、死ぬまでやります」。
11日に国立演芸場で行われた「8月中席」で高座復帰した三遊亭円楽 さんが涙ぐみながらそう言うと、客席からは拍手が起きました。
円楽さんは今年1月に脳梗塞のため入院し、5月に退院されましたが、現在もリハビリを続けており、現在の体調についてはご本人が「体調はまぁまぁ。ただ高次脳機能障害というのがある」と明らかにされています。
この障害により、短期記憶障害が起きているようなのですが、幸いにも「ありがてぇなとおもったのは長期記憶で昔覚えた落語は忘れてないんだよ。それはスゴいなと思った。しゃべっていると、なんとかストーリーで出てくる」という状況であることを、円楽さんはおっしゃっています。
私が円楽さんの言葉でグッときたのは、次のような内容のことでした。
「自分ぐらいの(技量・実力)落語家は他にたくさんいる。自分のかわりなんていくらでもいる。でも(周りの)みんなが優しくて、みっともなくても構わないからやりましょう、と言ってくれる」。
そして冒頭の「みっともなくてもいいから、死ぬまでやります」という言葉につながるのです。
先代円楽の名を受け継ぐくらいですから、円楽さんの落語家としての実力はもちろん、他にかわりなどないほどのものだと思います。
でも、病気によって記憶障害が起きたり、以前のような張りのある声が出せないなど、きっと私たちには想像もつかないくらいの不安や葛藤が心の中で渦巻いていることでしょう。
そんな円楽さんに、「どんな形でも良い、みっともなくても良いから、落語家をやめないでください」と言ってくれた方たちの存在は、なんと素晴らしいことか。
テレビでこの部分を見ていた自分まで思わず涙が出そうになりました。
そしてただ泣かせるだけでなく、そんな涙の場面のすぐあとに「(病院での)痛み止めの注射が痛いのなんのって。医者から『痛くありませんか?』かって聞かれたから、『ここ(病院に)いたくありません』って答えたよ。」と、落語家らしい「オチ」でちゃんと笑わせるあたり、円楽さんはまだまだ大丈夫!と勝手に思った私です。