音楽

葛城ユキさん 73歳で死去

若い方たちにはあまり馴染みがないかもしれませんが、葛城ユキさんといえば「ボヘミアン」でのパワフルなハスキーボイスがすぐよみがえるほど、印象の強いシンガーでした。

当時洋楽に関わる仕事をしていた私は、彼女の声を聞いてすぐ「ボニー・タイラーみたい」と思ったものです。

実際彼女は、アメリカの歌手・ボニー・タイラーが歌ってヒットさせた「Sitting on the Edge of the Ocean」を1990年に「哀しみのオーシャン」という邦題でカバー。

ボニーも葛城さんも、女性としてはかなり癖のあるハスキーな声質が魅力で、このカバー曲が成功した後の1983年に名曲「ボヘミアン」が大ヒットしたことで、葛城ユキという名前は一挙に有名になったのです。

この曲ももともとは別の歌手のために用意されたものだったそうですが、結果的に葛城さんのために最初から書かれたといっても良いような、彼女の代表曲となりましたね。

そして、近年も時折テレビ番組などでそのお姿を拝見したり、「夢グループ」が主催する懐かしのスターたちが出演する歌謡ショーなどに出演されている、という話は耳にしていました。

もともと素晴らしいスタイルと美脚の持ち主で、「アメリカンガール」のようなファッションがとても似合っていた葛城さん。

健康そのもののように見えていたのに、昨年春ステージ4の腹膜炎を患っていることを公表されました。

その後治療に専念され、今月17日に行われた「夢コンサート」に自らの強い希望で出演し、昼の部で「ローズ」を歌ったのが彼女の最後の「歌唱」となったのです。

「ローズ」は、ベット・ミドラーが歌って大ヒットさせた曲(同名タイトルの映画主題歌)で、伝説の歌姫・ジャニス・ジョプリンが主人公のモデルだと言われています。

ジャニスも聴く人の心を鷲掴みにするような、ハスキーボイスの持ち主でした。

そんなジャニスをモデルにした「ローズ」を、人生最後の歌に選んだ葛城さん。

その心の内を思うと、涙腺がゆるんでしまいます。

葛城さんは、「あと数日」の余命宣告を受け、6月27日の亡くなる5時間前に関係者に自ら電話をかけて「救急車を呼びました。今までありがとうございました」と告げたそうです。

自分だったら果たしてこんな風な幕引きができるだろうか、いやきっと無理だろうな・・・。

73歳でのサヨナラはどうしても「早すぎる」と思うけれど、彼女は精一杯自分の人生を生き切ったのだと私には思えます。

どうか空の上では、自由に好きな歌をたくさん歌ってください。