日本・東京で行われた2度目のオリンピック(通算32回目)は、新型コロナウィルスが世界中に広まっているさなかに2020年を迎えたため、その開催が翌年に持ち越されるという、前代未聞のイベントとなりました。
思えば、昨年の今頃は開催まであと数ヶ月という中、「やはり中止した方が良いのでは」「いや、各方面に大きな影響が出るから、実施した方が良い」など、世論もまだ大きく揺れていましたよね。
開催直前まで、オリンピックスタジアムの前には開催中止を叫ぶ人たちがたくさんいたり、行事に関わる人たちの様々な不祥事がこれでもか、とばかりに暴きたてられそのつど「責任をとって辞任」となったりと、正直いつ「中止」のニュースが流れてもおかしくないと思っていた人は少なくなかったと思います。
それでも1年遅れの「東京2020」は、2021年7月23日に開会式が行われ、17日に渡る「スポーツの祭典」は開催されました。
自国開催のオリンピックでは、開催国の選手がメダルを多く獲る傾向が以前からあり、「東京2020」でも日本人選手の活躍が連日伝えられていくと、不思議なもので、それまでオリンピック開催にどちらかと言えばネガティブな思いを抱いていた人でも、なんとなく「すごい!日本選手ががんばってる!」いう気持ちになることが多かったのではないでしょうか。
私もそんな思いを抱いた一人で、人の思いというのは本当に移ろいやすいものだと感じ入った次第です。
このようにオリンピック史上でも稀に見る、異例づくしな事ばかりだった「東京2020」の公式映画が、「東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B」として、「SIDE:A」は6月3日(金)から、「SIDE:B」は6月24日(金)から、それぞれ全国東宝系にて公開になりますが、本作品のメインテーマを藤井風さんが担当することになったと発表がありました。
海外でも評価の高い河瀬直美監督による「東京2020オリンピック」では、表舞台に立つアスリートを中心としたオリンピック関係者たちを描いた「東京2020オリンピック SIDE:A」と、大会関係者、一般市民、ボランティア、医療従事者などの非アスリートたちを描いた「東京2020オリンピック SIDE:B」という、異なる視点から描かれた2作品が公開されます。
オリンピック公式映画は、1912年の第5回ストックホルム大会以来、撮り続けられてきているそうで、日本での前回のオリンピックも名匠・市川崑監督により「東京オリンピック」というタイトルで公式映画が作られました。
そして今回の映画の総監督となった河瀬氏は、藤井さんの存在感や歌唱力、コロナ禍デビューという経緯も含め、運命的なものを感じたそうで、「藤井風という強く優しいきらめきが、今回のオリンピック映画のひとつの灯火になるはずだと確信して、一緒にこの作品を創ってもらえないかとお話しました」と、直接藤井さんにオファーしたことを語っています。
藤井風さんに昨年から注目してきた私は、彼がこのような大役を河瀬氏から直接請われて快諾したという話を知って、「すごいねっ、藤井くん!」と思わず鼻息が荒くなりました(笑)
大会そのものには賛否両論あった「東京2020」ですが、あの異常な状況下で、選手たちも関係者もそしてそれを見つめていた私たちも、現時点から見れば本当によく頑張ったと思うのです。
良いも悪いも、綺麗も汚いも、すべてのことをひっくるめてそれを優しい眼差しで見る目を持っているのが藤井風。
そんな彼にこの映画のテーマ曲をオファーした河瀬監督は、やはり慧眼の持ち主だと思います。