銚子電鉄は、たびたびテレビ番組で取り上げられることの多い、ローカル鉄道会社です。
残念ながら、私はまだ利用したことはありませんけれど、経営危機が何度もありながら、その都度ユニークな「戦略」を打ち出して注目を集め、現在に至るまで「生き延びてきた路線」というイメージをずっと抱き続けてきました。
正式名称を「銚子電気鉄道」という本路線は、銚子駅と外川駅を結ぶわずか6.4㎞の鉄道。
この2駅の間には、仲ノ町・観音・本銚子・君ケ浜・犬吠の5駅しかありません。
歴史自体は大正時代から続いている路線ということで、実は大変由緒あるものですが、2006年ごろには「鉄道車両の法定検査が行えない」という危機に直面。
そこで銚子電鉄が公式サイトで出したメッセージが「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」というものでした。
このフレーズは「現代用語の基礎知識」に掲載されるほどのパワーワードとなり、実際これがきっかけとなって各方面から支援の手がさしのべられて、同社から販売されている「ぬれ煎餅」への注文が殺到、さらには観光バスで現地まで来て、銚子電鉄に乗車する人たちも現れるなどした結果、当座の危機からは脱することができたそうです。
しかしその後も、銚子電鉄の「危機」がすべてなくなったわけではなく、自主再建を断念せざるを得ない状況に陥ったり、公的資金が投入されたりするなど、同電鉄は本当に何度もきわどい状況を乗り越えてきたのだと感じさせられます。
こんな一見悲壮感漂いっぱなしな銚子電鉄ですが、その危機的状況を逆手にとった自虐的商品をオンライン販売することで、逆境を跳ね返して来たツワモノでもあるんですね。
今回GWで「まさかの品切れ」とあちこちのメディアで取り上げられている「まずい棒」に関しても、明らかに「うまい棒」を意識した自虐バージョンなネーミングですし(ただし、これは味がまずい、という意味ではなく「経営状況がまずい」にちなんでいる)、大変な状況をシリアスに悩むのではなく、少し違う角度から眺めて見る面白さが、みんなにウケるのでしょう。
3年ぶりに何の規制もなく迎えたGWで、銚子電鉄を訪れる人が増加し、「まずい棒」全種類が売り切れたことに対し、同鉄道の竹本社長は「完売のお礼」と「欠品のおわび」双方をtwitterに動画メッセージで発信。
ただ、コロナ以前と比べると今もまだ(経営的に)厳しい状況が続いていることには変わりがないそうなので、私も機会があればこの「まずい棒」を購入して、銚子電鉄を支える小さな支援の輪のひとつになれればいいな、と思っています。