「巨星墜つ」
速報で長嶋茂雄氏死去の一報を知った時、まず頭に浮かんだ言葉です。
読売ジャイアンツで長年活躍し、巨人軍の終身名誉監督の座を授けられ、さらに国民栄誉賞も授与された長嶋さんは、日本人なら野球を知らなくても彼の名前は絶対に知っている、と言われるほど有名な方でした。
私の亡き父も「野球なら絶対に巨人!」という人で、夜晩酌をしながらテレビで巨人の試合を見るのを楽しみにしていたことを懐かしく思い出します。
そして昭和の「高度成長期」といわれた時代、子供の好きなものは?という問いに対しての答えが「巨人、大鵬、卵焼き」だったことも、すごく懐かしいですね。
監督が川上哲治さんだった時代、巨人は本当に強かった。
それは野球にあまり興味がなかった自分も知っており、選手としては「ミスター」こと長嶋茂雄さんと、「一本足打法」の王貞治さんという両雄は、今の大谷翔平選手を上回るのでは?と思うぐらい人気があったことも覚えています。
長嶋さんの存在は別格でしたよね。
選手としての活躍はもちろんのこと、長嶋さんはそのキャラクターに独特の魅力があって、それがまたファンを増やしたのだと思います。
私が個人的に一番印象に残っているエピソードは、後楽園に息子の一茂さんを連れて行った際、帰りに彼を球場に「起き忘れて」しまった、というお話です。
初めて聞いた時は、「それって話を盛ってるでしょ?」と思ったのですが、なんと実話だったとのこと。
帰宅して子供を忘れてきたことに初めて気づいたのだそうです。
もちろん一茂さんは球団関係者に保護されて無事だったとのことですが、試合で見せるスーパースターの姿とはまるきり違う「うっかりパパ」ぶりが、長嶋さんにおいては、かえって「完璧すぎないキュートさ」を感じさせてくれたのですから、面白いものです。
長嶋さんは、「ここぞ」という時にヒットを打ち、華麗な守備で私たちを魅了し、「ミスタープロ野球」(転じてミスター)の愛称で親しまれました。
王さんとの「ON」コンビで巨人軍の黄金時代を築き、現役時代には数多くのタイトルを獲得し、「わが巨人軍は永久に不滅です!」という引退セレモニーの際に発した言葉は、いまだに私たちの記憶に残っています。
近年は、脳梗塞の後遺症により車椅子で移動されながらも、様々なイベントに登場されているのを見て、まだまだお元気なんだと思っていましたのに、本当に残念です。
今、大谷選手をはじめとして、日本人の野球選手がぞくぞくとアメリカに渡り大リーガーとして活躍する時代になりました。
そうした選手たちを育む土台を作った立役者のひとりは、まぎれもなく長嶋さんだったと思います。
どうか、空の上から彼らのさらなる活躍を見守っていってください。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。