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萩尾望都氏 アメリカのコミック殿堂入り

萩尾望都さんのお名前を聞いて私がすぐに思い浮かべたのは、「ポーの一族」です。

自分は学生時代に英米文学を専攻していたこともあり、クラシックな欧米の文化や文学に憧れを抱いていたのですが、ポーといったら「エドガー・アラン・ポー」とすぐ口に出るくらい、ポーは「ゴシック的・怪奇的」な、独特の世界を築いたアメリカの作家で、ずっとファンでした。

その作家の名前がタイトルにつけられた「ポーの一族」は、西洋に伝わる吸血鬼伝説を題材にした、少年の姿のままで永遠の時を生きる定めを負わされた吸血鬼エドガーの物語です。

原作者の萩尾さんが描く、繊細な絵柄と、ヨーロッパの香り高いストーリー展開は、私の好みにぴったりで、今でも自宅の本棚には「ポーの一族」の単行本と、萩尾さんのもうひとつの傑作「トーマの心臓」の単行本がしっかりと収められています。

とにかく登場人物がみんな美しくて儚げで、女の子なら一度はこういう世界に憧れたことがあるんじゃないでしょうか。

この作品たちを生み出した萩尾望都先生が、このたびアメリカの権威ある漫画賞「アイズナー賞」で、優れた作品を残した漫画家を表彰する「コミックの殿堂」を受賞されたそうです。

今回の受賞を発表した小学館によれば、過去に同じ賞を受賞した日本人には、手塚治虫さん、大友克洋さん、宮崎駿さんら、錚々たる人たちの名前があがっており、萩尾さんは日本人としては7人目の受賞だということです。

萩尾さんがその物語の中で紡ぐ世界は、単なる漫画の域を超えて、ほぼ純文学の世界だと個人的には思っていますので、今回の受賞は作品の質の高さを評価されたということで、とても素晴らしいことですね。

今回の受賞にあたり、萩尾さんは「この素晴らしい贈り物に心から感謝いたします。私は10代の頃、手塚治虫の作品に感動して漫画家を目指しました。文化や表現はこのように派生し受け継がれていくのだと、改めて思います」とコメントされました。

萩尾さんが手塚治虫の作品に感動して漫画家を目指したように、きっと萩尾さんの作品に触れて、漫画家を目指し、実際に夢を叶えられた方もいらっしゃると思います。

耽美で、どこかしら寂しさや達観した死生観が漂う独特のジャンルを築いた漫画家のひとりとして、萩尾望都さんの名前はこの先も永遠に残っていくことでしょう。